為替変動リスクが大きい外国為替証拠金取引(FX)について、金融庁が元手の何倍まで取引が可能かを示す「証拠金倍率」の上限を現在の25倍から10倍まで引き下げる検討に入ったことが29日、分かった。年内にも実施する。これまで100万円の元手があれば2500万円の為替取引が可能だったが、規制強化が実現すれば上限が1000万円まで下がるため、投資家が流出する可能性もある。

FXは少ない元手でも多額の利益を狙えるとして個人投資家の人気を集めているが、相場急変で一気に損失が膨らむ恐れもある。規制強化は個人投資家が想定を超える損失を抱えるリスクを減らすことが狙い。またFXのリスクは取引の相手方となる店頭FX業者にとっても大きい。店頭FXの年間取引規模は5000兆円規模に達しており、店頭FX業者が破綻した場合、外国為替市場や金融システムにも影響を及ぼしかねない。このため金融庁は店頭FX業者の自己資本規制比率を上げるなど、リスク管理強化にも乗り出す。

一方、証拠金倍率を下げれば、より高い倍率で取引できる海外の無登録業者に顧客が流出することも考えられ、「顧客保護、市場全体のリスク抑制の観点からは逆効果」(店頭FX業者)との反発も根強い。また、個人投資家が証拠金倍率は20~25倍に設定されている仮想通貨市場に流れる可能性もある。

金融庁は店頭FX業者の決済リスクを議論する有識者会議を4月までに4回開き、規制強化策を議論している。金融庁は2010年、証拠金倍率の上限を50倍に設定。翌年、25倍に引き下げた。

 

FXの歴史

今では信じられませんが、日本では1998年までは為銀主義といって、外国為替公認銀行(=公認された一部の金融機関)しか外国為替の取引をすることができませんでした。

そんな中、外為法(=外国為替及び外国貿易法)が規制緩和により法改正となって、これまでの為銀主義が撤廃されて、外国為替公認銀行だけではなく企業間においても自由に外国為替の取引ができるようになりました。これが、「為銀主義の撤廃」です。

 

1998年4月日本でFXが始まる

 

時は流れ1998年4月。それまで日本では一部の金融機関のみが為替取引を行うことを認められていましたが、外為法の改正により一般企業や個人も為替取引がある程度できるようになりました。

そんな中で生まれたのがFXという仕組みです。日本で初めてFXを立ち上げたのはダイワフテーチャーズ(現在のひまわり証券)です。しかし、当時はまだインターネットがそれほど一般的ではなく、したがってFXの普及のスピードもゆっくりでした。

2000年頃からは次第に一般人の間にインターネットが普及していきます。そして、それに伴ってFXも次第に知名度を上げていきます。FXは従来の投資と比べて短期間で高い利益を得やすいことから次第に参入する個人が増えて、その受け皿となる業者も一気に増えました。

が、ここで問題が生じます。当時は金融庁がFXに対して十分に注意を払っていなかったこともあり、悪質な業者が次々とFX業界に参入するようになってしまったのです。

 

故意のスリッページや高スプレッド業者の氾濫

 

中でも問題となったのがスリッページ詐欺。スリッページとは注文した値段で約定せずに、その後レートが変わってしまってから約定することです。時折スリッページが発生すること自体は仕方のないことなのですが、当時はスリッページを故意に捜査して儲ける悪質な業者が少なくありませんでした。

加えて当時はスプレッドが今よりも何倍も高く、業者に有利な、したがって一般人に不利な仕組みになっていました。

こうした悪質業者にまともな経営ができるはずもなく、ついには顧客資産を流用する事件も発生しました。金融庁もさすがにこれではいけないと思ったのか本腰を入れて対策に乗り出します。2005年には金融先物取引法が改正され、すべての業者に登録が義務付けられました。これにより金融庁からOKが出ない業者は営業ができない状態になり、悪徳業者はおおむね排除されました。

その後、2009年4月には信託保全が義務化されます。信託保全とは簡単に言えば、FX会社が倒産しても、預貯金が返還される仕組みのことです。これによりFX会社が倒産した場合でも投資家が守られるようになりました。(信託銀行が倒産した場合も信託財産は守られます)。

このようにいろいろな規制により少しずつ健全化が進んでいったFXの世界ですが、実はこの時点ではまだ大きな問題を抱えていました。

レバレッジです。

 

2010年日本でのレバレッジ規制

 

FX取引は非常に投資家の性格が色濃く反映される取引です。レバレッジをあまり効かせずに安全な運用をしようとする人もいれば、逆にハイレバレッジで大きな利益を狙う人もいます。投資家に選択権があること自体は悪くないのですが、当時はFXブームで知識もないままハイレバレッジを選択する素人が多く、問題となっていました。

もちろんそれも自己責任といってしまえばそれまでなのですが、国にとってもFXによる破産者が増えることは望ましいことではありません。

そのため、金融庁は2010年に日本国内のFX業者が提供できるレバレッジを最大50倍に規制しました。その後2011年には最大25倍にまで規制強化され、極端に投機的なギャンブルじみたFX取引はできなくなりました。

こうした金融庁の取り組みにFX業者が呼応したこともあり、2011年頃には悪質な業者はほぼ完全に排除されました。FX業者もレバレッジ以外の魅力あるサービスを重視するようになり、スプレッドを小さくしたり、口座開設キャンペーンを行ったりするなどして顧客を集めるようになりました。

 

習慣を変えれば人生が変わる!